こんにちは。大人の学び直しとして美術を体系的に学びはじめて6年目になったアルパカです。
この記事では、自分の学びの振り返りとして、当時のレポートやテキストを改めて通読し、美術史をおさらいしていきたいと思います。
今回は、西洋美術史上で最古と位置づけられる古代地中海文明について、改めて整理してみたいと思います。
今まさに学生としてレポートや授業に奮闘されている方、なんとなく美術館が好きだけれどより詳しく学んでみたいと考えている方などの参考になりましたら幸いです。
西洋美術はじまりの文明――古代地中海文明
古代地中海文明は、紀元前3000年頃に誕生したとされている文明です。
ギリシア、ローマ美術を概観する際に、ギリシア美術のはじまりをいつとするかは諸説あるようですが、手元にある複数文献から、ここではクレタ美術が最古としたいと思います。
クレタ美術とは

クレタ美術とは地中海周辺で最初に開花した美術で、クレア島で誕生したとされており、ミノス美術と呼ぶ場合もあります。
一般的には、初期:紀元前3000年〜/中期:紀元前2000年〜/後期:紀元前1500年に分類できます。
初期は石器・青銅器時代にまたがっており、シリアなどの周辺地域からの影響が指摘されています。
クレタ美術の特徴が現れているのは初期〜中期にかけての旧宮殿時代です。
マリア、クノッソス、ハギア・トリアダなどに壮麗な宮殿が作られ、カマレス陶器のような豪華な工芸品が作られました。
また最盛期は紀元前1700年〜1400年頃とされる新宮殿時代で、人物、動植物、海上生物を自由で明るく描いた自然主義的な表現の壁画が残されています。
地中海の豊かな自然をそのまま造形化したようなこの表現は、紀元前15世紀後半の地震を契機に衰退期に入り、ミュケナイ美術に継承されます。
ミノア文明下のの遺跡クレタ島のクノッソス
クレタ美術の窺い知ることのできる遺跡には、ギリシアのクレタ島に遺るクノッソスがあります。
ここは、ミノア文明下で儀式や政治の中心であったと考えられており、観光地としても人気です。
ミュケナイ美術とは
ミュケナイ美術は、おもにギリシア本土を中心に紀元前1600年頃から発展した美術です。
前述の通り、クレタ美術の自由闊達な自然主義表現を受容しました。
一方で、クレタ美術との違いは、建築様式です。自由であるがゆえに秩序を欠いたクレタ美術の建築に比べ、ミュケナイ美術における建築構造は、「メガロン様式」という堅牢な城壁を周囲に配した秩序ある建築プランが採用されています。
メガロン様式とは

メガロン様式とは、ミュケナイ美術の中核となった建築様式です。大きく5つの特徴があります。
- 長方形の平面構成
中央に柱で支えられた広間(メガロン)があり、奥に玉座のある祭壇的空間をもつ。 - 前室(プロナオス)+玄関(ポーチ)構成
広間の前に前室とポーチが続く三部構成(ポーチ→前室→広間)。 - 中央に炉(ハース)
広間の中央に円形の炉があり、その上部は煙抜き用の開口部がある。 - 屋根は木製梁と日干しレンガ
屋根は平らまたはわずかに傾斜し、木の梁が使われた。外壁は石造、上部は日干しレンガ。 - 支配者の権威を示す空間
宮殿の中枢として、王権の象徴的空間とされる。
メガロン様式は、のちの古代ギリシア神殿の設計思想にも影響を与えたともされています。
アガメムノンのマスクや工芸品の特徴
ミュケナイ美術の現存する作品には、《アガメムノンのマスク》がとくに有名ではないでしょうか。
このマスクは、1876年に発見された遺物で、紀元前1500年頃のの作例とされています。
また、工芸品についても初期はクレタ美術ののびやかで自然主義的な表現が伺えますが、しだいに高度に様式化し、抽象的で硬調的な表現となり、陶器にも図案化や構成化を示す造形感覚がみられるように変容していきます。
ミュケナイ美術は、地周回民族移動が起こった紀元前1200年頃を境に衰退に向かい、エーゲ海の青銅器時代の文明は終わりを迎えます。
西洋美術のはじまりである地中海文明

地中海で生まれたクレタ美術やミュケナイ美術は、その後古代ギリシア美術へ発展していていくことから、西洋美術史において最古の美術と位置付けることができます。
西洋美術は、自然豊かな地中海を体現したような自由闊達で色彩豊かなクレタ美術からはじまり、それを受容し発展したミュケナイ美術によって、様式化されました。
ギリシア美術の特徴である硬質的な表現はミュケナイ美術から見られているんですね。
ギリシアは現在ではリゾート地としても有名ですが、さまざまな古代遺跡の遺る美術好きとしてはロマン溢れる場所でもあります。
ぜひ旅行で行った際は、古代遺跡も訪れてみてくださいね。